良いお年を


母が電話で、こんなことを言った。
「あんた今年は実家に帰れないなら、和菓子屋さんののしもちを買ったら。
和菓子屋さんのおもちは美味しいよ」
わたしはいつものとおり生返事。
だけど、今日、ふと思い立って、通りにある和菓子屋さんに行って、のしもちを予約した。


予約したときに、わたしはなんだか所在なくて、店の人に
「わたしは和菓子屋さんでのしもちを売ってることを知らなかったんです」と言った。
「母が和菓子屋さんのもちは美味しいからって、教えてくれたんです」なんて付け加えて。
言った後に、すぐ後悔した。自分の顔が赤くなるのがわかった。


キクゾウは、大きな目をくりくりさせて、
「お正月嫌い、みんな居ないんだもん」って、頬をふくらませる。
わたしは、ほんとにおっきな目だなぁってキクゾウをのぞきこみながら、
わたしも居ない人の方になりたかったなぁって、思った。
キクゾウはすごく可愛くて、わたしは返事もろくに出来ない。


中学生の頃、いつも大晦日の日にいっしょに居た仲良しの子と、
いつのころから連絡を取るのをやめてしまったんだろうか。
彼女から、何年かぶりに来た「また会おうね」って手紙を、
どうしてわたしは返信もせずにしまいこんでしまったんだろうか。


年末は、切なくなるから、ちょっと苦手だ。


みなさん、良いお年を。